日本の昔話、おとぎ話、民話

笠地蔵4 おくりもの

おくりもの

夜になり、おじいさんとおばあさんが眠りにつくと、遠くのほうでおおきな物音がして、二人は目を覚ましました。
ドスン、ドスン
大きな、地響き(じひびき)のような音です。
「はて、なんの音じゃろう?」
その音は、どんどん大きくなって家に近づいてくるようです。
「正月そうそう、鬼でもやってきたんじゃろうか?」

ドスン、ドスン、ドン

音は、家の前でとまりました。
おじいさんとおばあさんは、うごかずにじっとしています。

しばらくすると、また、
ドスン、ドスン
という音がはじまりましたが、今度は、音が遠ざかっていくようです。

はてさて、何だったのだろうと思い、おじいさんとおばあさんは、入口の扉を少しだけ開けて、外の様子をうかがってみました。

すると、どうでしょう。
家の前の道を遠ざかっていくのは、笠をかぶった五人のお坊さんと、手ぬぐいをかぶった一人のお坊さんです。
そして、家の外には、米俵(こめだわら)と酒樽(さかだる)、そして、たくさんの野菜が積んであるではありませんか。

あのお坊さんたちは、どうやら峠のお地蔵さんで、ここまで贈り物を運んできてくれたのですね。

「おじいさんが、いいことをしたので、いい贈り物をいただきましたね。ありがたや、ありがたや。」
「これで、無事にお正月を迎えることができるのう。」

おじいさんは、次の日、もう1つ笠を作って、峠まで届けに行きました。

               ー おしまい ー


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