
狐の嫁入り4 結婚式
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さて、結婚式の当日。
狐の村人たちは、皆、人間に化けて立派な結婚行列を組んで、竹蔵たちの村へとやってきました。
このとき、はじめて竹蔵は狐の娘を見ました。お紺(おこん)という名前で、色白でなんとも美しい娘です。
いよいよ結婚式がはじまります。
そして、これが終われば、恐ろしいことが待っている。
竹蔵の心はゆれ動き始めました。
お紺を龍神の生け贄にするのが、かわいそうになってきたのです。
たとえ狐でも、本当に結婚して嫁にしてもいいのではないか。
しかし、村人たちを救うには雨乞いを成功させなければならぬ。
竹蔵は、村の男としての責任感と、お紺を助けたい気持ちの間でなやみました。
そして、もうじき結婚式がおわるというときに、隣に座っているお紺に小さな声でささやきました。
「逃げろ。この結婚式は罠(わな)だ。おわったらお前は殺される。」
きっと、おどろくに違いないと思いましたが、意外にも、お紺は落ち着いて、こう答えました。
「いいのです。人間が狐に結婚を申し込むなんて、なにか下心(したごころ)があるにちがいないと、はじめから分かっていました。それに私は、昔からあなたのことが好きで、よく村に来ては、あなたを眺めていたの。少しの間でもあなたと夫婦になれて、とても幸せよ。」
下心(したごころ):悪いたくらみ
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